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川に架かる橋
聖地、長良川郡上

 第35回のジャパンカップ鮎全国大会はトーナメンターにとっては聖地ともいえる長良川郡上を舞台として開催される。

 当地での開催は1986年の第2回大会、2017年の第33回大会に続く3回目になる。数々の大会でドラマを生んできた聖地郡上だが、ジャパンカップに関してはまだ3回目だったのか、という印象を受ける。今大会の行方を今シーズンの郡上の様子と参加選手から考察してみる。

 

 今年の郡上、中でも大会エリアの大和地区は解禁当初こそ振るわなかったものの、7月に入るとサイズ、釣果とも上向きになり、郡上エリアの中でも一番賑わっていた。そのまま良い状態がお盆前まで続き、当初開催予定の8月17日、18日の開催であればハイスコアの非常に面白い大会になるのでは、と期待していた。しかし西日本をゆっくりと縦断した台風10号から不安定な天気が続き、増水減水を繰り返す河川状態で大会ウィークを迎えることになった。

 鮎自体は豊富な放流鮎に加えて天然遡上鮎が活気付きだし、ある程度の釣果は望める状況だが、台風10号以降は空気が変わり、晴れて乾いた空気が入れば夜は随分と冷え込み、曇りがちで湿った空気が入ればまだまだ蒸し暑いタイミングもありと、水量に加えて水温も不安定な状況が続き、それが鮎の活性に大きく影響して釣り師の判断を難しくさせているようだ。
 24日、25日に行われたダイワマスターズ全国大会の朝早い試合では、全国屈指の名手をもってしても時速3匹程度と追わない鮎に苦労していた。それが日差しを背中に感じる頃になると猛然と追うようになり、朝は掛かっていなかった流れでも連発するようになっていた。ただ同じポイントで数が出るようなことは少ない。

 加えて9月になると大会エリア内では名皿部橋上流と和合橋下流は友釣り専用区が外れ、網やしゃくり漁が可能となり、特に週末は夜遅くまで漁を行う姿を見るようになる。そのようなポイントでは、下見では有った反応が得られない、という状況も考えられ、必然的に動く必要が出てくる。

 野鮎からの反応を的確に察知し、その日その時のパターンをいち早く掴み、それを根拠として動けるか、が勝ちポイントを重ねるキモになるのではないかと考える。

川
数字から予測

 では数字を予測してみる。2017年の同大会では、予選リーグの総釣果が1,447匹と良く釣れた大会だった。過去のデータを見ると、良く釣れる大会ほど予選リーグ上位の勝ちポイントは高くなる傾向にある。(2017年予選リーグ3位で勝ちポイントは30.5ポイント、各試合平均5ポイント=平均2位以上のハイスコア)すなわち釣れる状況下ではパターンを掴んだ選手はどの試合でも安定して釣果が出せる。しかし釣れない大会ではパターンを掴むことが難しく、予選6試合を全てまとめることは名手であっても難しいと言える。言い換えればスタートに失敗しても全員にチャンスがある。(2018年那珂川予選リーグ総釣果902匹、3位勝ちポイント26ポイント)
 

 ここから今大会予選リーグを想像してみる。同地での2017年大会ほどの釣果は望めないが、直前からの水温水量変化が小さい状況であれば総釣果は1,200匹台に乗ることも予想する。その場合は決勝に残れる勝ちポイントは29ポイント、予選6試合平均で釣果10~11匹を想定する。

 逆に水温水量の変化が大きい場合の総釣果は1,000匹台、勝ちポイントは27.5ポイント前後、同、釣果8~10匹になるのではないか。

 追わない早朝の試合を繊細に乗り切り、追いを察知したならば大胆に攻撃的に攻められるか。早朝に行われる予選リーグ第1試合、2日目の第5試合に要注目だ。いずれにしても大会を戦う総合力が高く求められる予選リーグになることは間違いない。

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決勝戦

 そして厳しい予選リーグの先にある決勝戦だが、今大会の決勝エリア、ウインドパーク前はお盆の増水以降、場所むらの傾向が感じられる。

 予選リーグの流れから川を読み、3つのエリアのどこからスタートを切る選択をするか。そして釣れるエリアで如何に数を稼ぎ、厳しいエリアに繋げられるか。その先に栄光が待っているのではないか。

 その為にはスタートエリア選択権がある予選リーグ1位抜けが重要になると考える。

24名の選ばれし者たち

 上記を踏まえて参加選手から大会の行方を考えてみる。シードの3名に加え、2017年郡上での全国大会準優勝の椿選手、3年ぶりの出場となる島選手らが中心となり、そこへ他の選手がどう絡んでくるかが見所だ。

 昨年度優勝の楠本選手は、8月初旬に行われた第43回G杯争奪全日本アユ釣り選手権で2度目の優勝を飾るなど昨年より更に進化した釣技に加えて、徹底的な下見から導き出した答えを元に試合を組み立てていく。その動きに一切の妥協は無く、根拠を持って攻めていく釣りは如何なる河川状況でも釣果を得てくるだろう。

 2014年、昨年と準優勝の高橋選手は、数ある優勝キャリアに郡上での勝利を加えたい思いは強いだろう。得意とするその時のパターンを掴んで釣果に繋げる釣りが炸裂すれば優勝にもっとも近い選手であることは間違いない。

 このエリアを知り尽くしている昨年3位の木全選手は釣り人が多い中からでも常に釣果をまとめてくる。選手以外の釣り人も多いと予想される中では木全選手の立ち回りに注目したい。

 2016年から4年連続出場となる椿選手は、2017年、決勝後半戦で逆転されての準優勝の悔しさはまだまだ鮮明に覚えているはずだ。地元矢作川で鍛えた広範囲に且つ積極的におとりを通していく釣りは、天然遡上鮎の追いが活発となった郡上にもマッチしそうだ。

 河川状況が厳しいときほど強さを発揮する島選手は1999年から今回までの21年間のうち、出場できなかったのは4回だけ。ジャパンカップの顔と言ってもいいその存在感を、郡上でさらに増すことができるかに注目だ。

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 ここに絡んでくる選手だが、まず注目したいのは長野の小林選手だ。2015年から5連連続の出場となるが、2016年は惜しくも4位、今シーズンは先のダイワマスターズ全国出場も果たし、総合5位の成績を残している。この結果は着実に実力を上げている証しだ。学生時代はスキーでも華々しい戦歴を残し、そこで鍛えた体幹と足腰はスピード感ある釣りの基礎となっている。90分時間内帰着の予選リーグ6試合を優位に戦うにはそのスピード感と体力も重要で、高まった実力とうまくシンクロすれば、いつ頂点を掴んでもおかしくない存在だ。
 スピード感と言えばここ最近全国区でも結果を残している西部選手にも期待が高まる。ソリッド穂先を使用した攻撃的な釣りスタイルと基礎となっている泳がせ釣りをミックスさせてどの大会の釣りでも穴が無い。立ち回りが今回の郡上にハマれば確実に上位に絡んでくるだろう。
 そして初出場ではあるが注目したいのは佐川選手だ。神奈川県在住だが、郡上へも足しげく通い、今回のセミファイナルでは中部エリアの強豪を抑えトップ通過での全国参加だ。セミファイナルでは試合エリアに合わせたタックルや攻め方で狙い通りに釣果を得ていた。これは大きな自信となったはずで、この勢いのまま上位争いに食い込んでくる可能性も大いにある。
 地元の古川選手はこのエリアで開催される大会で常に上位に食い込んでくる実力者だ。我が庭のような大和エリアでの戦いに地元ならではの情報力も加われば、爆発的な釣果を上げてくる可能性も大きい。
 今回ダイワからは伊藤、山口2名のテスターが参戦する。一時代を築いた伊藤選手のソリッド穂先を使った繊細な釣りは、今でもまったく陰りを見せることなく、逆に輝きを増している。限られたポイントから釣果をひねり出す技術は秀逸で、若い選手を脅かす存在であることに疑いは無い。

 シマノのプライドを背負ってこれを迎え撃つのは、島選手に加えて小沢、沓澤、森、上西選手だ。小沢選手は、今回は出場を果たせなかった弟、小澤剛名人とともにジャパンカップ最多優勝4回の記録を持っている。名手となった今でも変わらない鮎釣りに臨むその飽くなき探究心で2012年仁淀川優勝から7年ぶりの優勝を引き寄せるか。
 他にも大会経験豊富な大前選手、昨年に続いて2度目の出場となるこうちゃんこと加藤選手、厳しい各地区大会から勝ち上がってきた選手たちは誰もが優勝の可能性を持った実力者だ。
 長良川の千変万化する流れに加えて、刻々と変わる天候、水温、そして他の選手や一般釣り客の動きを読んで長良川を攻略し、栄光を手中に収めるのは誰か。注目の戦いはいよいよ今週末となった。

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